映画『アンナプルナ南壁』

先日、映画『アンナプルナ南壁 7400mの男たち』を観てきた。ヒマラヤ山脈の8,091m峰、アンナプルナの山頂間近にして高山病で遭難した登山家を救出するドキュメンタリーだ。

先々週は『クライマー パタゴニアの彼方へ』も観た。こちらは南米パタゴニア地域の尖塔セロトーレに若きフリークライミングチャンピオンが挑むドキュメンタリー。

(以降、ネタバレ的な内容のため、これらの映画を観ようと思っている人はご注意を。)

登山・クライミングという共通項はあるものの、テーマがかなり異なる両者を比較するのは問題かもしれないが、率直に言って『アンナプルナ〜』の方が数段良かった。(『クライマー』もクライミングの臨場感やパタゴニアの自然の描写が素晴らしく、全体的には良い映画だったが。)

トルストイだかドストエフスキーだか忘れたが、「幸福はワンパターンだが、不幸には幾つもの顔がある」というようなことを書いてたと思う。「成功」と「失敗」も同じようなものかもしれない。成功には一種のパターンや「型」が存在するが、失敗にはそのような決まりきった型はなく、その背後には無数の原因、無数の物語がある。

『アンナプルナ〜』における救出劇 を「失敗」にカテゴライズするのは心が痛むが、私は、自然の、その偉大さと、その自然の偉大さを前に、経験やスキル、愛や友情、現代の航空技術、医療技術をもってしてもなすすべもない人間のその様に、感動した。

余談だが、『クライマー』の観客は、MERRELLKEENなどのローカットのスポーツシューズの人が多かった。『アンナプルナ〜』では、ミドルカットのトレッキングシューズの人が目立った。この手の映画は、客層ならぬ「靴層」というものがあるのかもしれない。